「建設業 業種別に基準額」報道を見て考える
報道内容
8月21日の日本経済新聞の朝刊に、「建設業 不当な低賃金なら行政指導 国交省、職種別に基準額」というタイトルの記事が掲載されいました。その要旨は、人手不足が問題となっている建設業界の賃上げをはかるために、賃金のもとになる労務費に目安を設けるというもので、その際に、とび職や鉄筋工などを念頭に職種ごとに標準的な水準を示す、というものです。今秋のにも対策の方向性をまとめ、24年の通常国会での建設業法の改正をめざす、というタイムスケジュールになっています。
日本の賃金
日本の賃金の推移を改めて見てみると、上のOECDの資料からしても、日本は1991年から2020年までの30年間ほとんど横ばいであるに対し、他のG7の国々はしっかり右肩上がりになっているのがよくわかると思います。日本だけがデフレ経済により、賃金も含めて縮小均衡に陥っていて未だに抜け出せていない状態と言えます。また、このグラフは名目賃金の推移を表しているのですが、日本の実質賃金については、ここ最近の物価高を反映して、こちらは下がり続きているのです。厚生労働省が発表した6月の毎月勤労統計調査によりますと、1人当たりの賃金は物価変動を考慮した実質で前年同月比1.6%減っていて、マイナスはなんと16ヵ月連続なのです。政府は、今年の春闘での賃上げを評価しているようですが、現実は「物価高に賃上げが追い付いていない。」状態となっているのです。
建設業界
さて、建設業界では人手不足を解消するためにも、賃金を初めとした労働環境の改善は急務であることは間違いないでしょう。しかしながら、著しい低価格受注(いわゆるダンピング受注)が、未だに大きな問題となっていて、それが建設業界の低賃金問題や若手の労働力不足に繋がっています。そのダンピング受注は、公共工事は職種別・都道府県別に労務単価が既に公表されていることから比較的少ないのに対し、民間工事では特に中小建設業において顕著であるという状況です。
建設市場自体が縮小している状態の中で、中小建設業者は、受注競争に勝ちながら、工事の品質を向上させていく必要があり、そのためには優秀な人材を安定的に確保していかなければならないのです。原材料費の高騰が収まらない中で、今後は、賃上げをしながら利益を上げていかなければいけないのです。そして、来年は時間外労働に上限規制を適用する「2024年問題」もあるのですが、建設業界のことを考えると、時間外規制の延期を本気で考えなければいけないのではないでしょうか。
なお、建設業に係るご質問については、「行政書士たかした事務所」まで、お気軽にお問い合わせください。