【NEWS】建設業界の賃上げ
2023年の日本の動向
これまで日本は30年間賃金が上がらない状況が続いてきましたが、どうやら今年は、物価高による国民生活への打撃の解消、人手不足感が強まる中での人材引き留め策や、ユニクロのようなグローバル企業の海外との格差解消、そして岸田政権の賃上げに対する強い要請等にり、今春闘では1997年以来最大の3%に近い賃上げが予想されています。
しかし、賃上げがいくら3%上がったとしても、物価が同程度上がってしまえば、賃上げ率から物価上昇率を引いた、いわゆる実質賃上げ率は、ゼロとなってしまう水準なのです。これまで、日本の労働者はデフレ経済の中で、30年間我慢していたことを考えると、物価高を上回る力強い賃上げを継続的に続けられる環境に日本全体を変えていく必要があると思います。
建設業界では
建設業界の賃上げについて考える上で、押さえておくべきことがあります。
それは、「総合評価落札方式 賃上げ 加点措置」です。これは、2022年4月から始まった措置で、「従業員の給与を大企業は3%、中小企業は1.5%引き上げると表明すれば、国が実施する総合評価落札方式の入札で加点する制度」です。今年、この措置が継続するのかが注目サリていましたが、1月18日の建設工業新聞に次の記事が掲載されました。
「賃上げ企業を総合評価方式の入札契約手続きで加点する国の措置が、現行制度の大枠を変えずに2023年も継続することになった。財務省からの連絡を受ける形で、国土交通省が「大企業」で3%以上、「中小企業等」で1・5%以上と定めている賃金上昇率の目標値を23年も据え置くと省内発注部局に周知した。22年度の契約案件から適用が始まった賃上げ加点措置は実質的に2年目に突入する。」
建設業界も、賃上げに対する圧力が強まる中、この「総合評価落札方式 賃上げ 加点措置」が継続になりました。しかし、業界からは制度に対する不満も多いのが現状で、先ほどの建設工業新聞の記事にも次のような内容が掲載されています。
「建設業界からは現行制度の改善や見直しを求める声が後を絶たない。賃上げ実績の確認書類の簡素化や経営実態に即した柔軟な確認手法の充実に加え、物価高騰の現状を考慮した減点措置の緩和、賃上げ実施後を評価する「事後評価方式」への転換などの要望が寄せられている。中小企業が多い地域建設業への影響を考慮し、都道府県や市区町村の公共工事への対象拡大を憂慮する声も根強い。」
特に、賃上げについては、大企業は3%以上上げますよ、中小企業は1.5%以上あげますよ、といわゆる「表明」すればいいのですが、春に賃上げを表明して、その後、なんらかの理由による原材料費の高騰により、賃上げが表明通りにいかなかった場合には、加点がなくなるどころか厳しい「減点措置」がとられるのです。2022年の物価動向を経験している経営者にとっては、そうしたことが十分に考えられるので、今年は賃上げ表明することを躊躇する会社も多くなるのではないかと心配します。
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